愛媛信用金庫 今治支店(旧 今治信用金庫本店) 丹下健三と今治(4)

今治市の中心部に位置する旧今治信用金庫本店は1960年竣工。今治にゆかりある建築家、故 丹下健三の設計による建築です。

片持ちで力強く張り出した厚い庇、そして今治市庁舎(1958年)に用いられたブリーズソレイユにも通ずる格子状のパターンが印象的です。

丹下健三の父・辰世(ときよ)は旧今治商業銀行の実質的な責任者として世界恐慌後の建て直しにあたりましたが、そうした縁で、この銀行建築について丹下健三に設計が任されたようです。

4階にはホールが配置されており、当時、市民のための空間として開かれた意図が見て取れます。分厚い庇の下に開かれた空間は、ホールのホワイエとも繋がるような開放的な外部空間。この旧今治信用金庫は同じく丹下健三の設計により先行して手がけられた今治市庁舎公会堂(1958年)の近くに立地していますが、それらの建築とあわせ市民のための建築として、建築と都市とが融合した「都市のコア(核)」を成すといってよいのではないでしょうか。

そして、何より特徴的なのが造型的な屋上。丹下健三の研究者としても知られる建築史家・藤森照信さんがかつてこの屋上についてお話されていた内容をご紹介します。

丹下事務所では設計するときに、海が見える場所であれば、海を見るための場所を作らないと丹下さんが納得しなかったそうです。(略) 海があまり見えないところでも、無理してでも見えるようにしようと作られているものもあります。例えば、倉敷市庁舎や今治信用金庫がそうです。海を見るための階段状の、異様な屋上があるんです。屋上庭園というか、屋上が階段状になっている。

出典「瀬戸内アーキテクチャージャーナル DOTS vol.1」(2014)


※内部および屋上は通常非公開です。


愛媛信用金庫 今治支店(旧 今治信用金庫本店)

  • 設計:丹下健三(丹下健三+都市・建築設計研究所)
  • 所在地:愛媛県今治市常盤町4-1-15
  • 構造:鉄筋コンクリート造
  • 竣工:1960年

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