トークイベント『愛媛の建築について』宮畑周平(1)

松山・ケミビルで不定期に開催されているイベント「知らなくても楽しい、知ったらもっと楽しい○○の世界」。

10月11日の第4回目となる同イベントでは『愛媛の建築について』のテーマのもと、白石卓央、宮内健志と宮畑周平さんの三人で、愛媛の建築やデザイン、地域の素材など様々な観点でトークを行いました。

本記事では、宮畑周平さんによるトークの内容を2回に分けてお伝えします。


Photography: 宮畑 周平 [Setouchi Editorial Institute]


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トークイベント『愛媛の建築について』宮内健志(1)

トークイベント『愛媛の建築について』宮内健志(2)


自己紹介 -Editing, Writing, Photography

こんばんは、宮畑周平と申します。42歳で編集者です。建築の書籍や雑誌などを編集していた経験があって、建築とはずっと付き合っています。編集だけでなく、建築を伝えるための文章を書いたり、写真を撮ったり、媒体の編集もします。例えば最近の仕事として、インテリアデザイナー北岡節男さんの仕事を紹介するページ編集したりしました。


今、弓削島という瀬戸内海の小さな島に住んでいますが、地域の魅力を発信することもやっています。JALの国際線の機内誌に文章を書いたり、住宅の写真を住宅誌に載せていただいたりしました。建築写真としては、媒体の伝え方について意識をしながら、建築が形作る環境やそこで人がどのように振る舞っているかなど、建築単体ではなく周りとの関係性みたいなものをうまく表現できたらなと思っています。

建築の「造形」を表現するのが建築写真だ、という言い方もできると思いますが、私としては、写真に建築と人が入ってなんぼかなと。人がそこでどのような振る舞いをしているのかを暴いていくというか、それを明らかにできたとき、僕の建築写真は成功だったなと思っています。


例えばこの写真では、右にあるのが原爆ドームで、左にあるのが広島の建築家・三分一博志さんが改修設計を行った「おりづるタワー」という建物です。原爆ドームは戦争の悲惨さを今に伝える建物ですが、原爆ドームに敬意を払い、おりづるタワーという名前がつけられています。この二つの建物の前を歩いているギャルが写メを撮ってワーワー言いながら歩いているところです。この様子が建築と周りを取り巻く環境のリアルなのかなと思います。


この写真は谷尻誠さんが設計した、今治市にある「今治のオフィス」です。写真に写っている電車が走っているところは建物の裏手になります。みんな表の正面から写真を撮るのですが、現地に行くと裏に線路があって、こっちのほうが面白いのではないかと思って撮りました。このように、建築と環境と人を考えながら表現しているつもりです。


私は弓削島の上弓削という集落に住んでいますが、弓削島はしまなみ海道と繋がっていないので因島からフェリーで渡ります。

これは海沿いでとんど焼きをしている様子です。なかなかドラマチックなお祭りです。島には弓削商船という学校があり、とても優秀な方が多くて教育的にも充実しています。この学校は明治時代からあり120周年を迎えました。



上弓削田坂邸リノベーション

弓削島ではKitchen313という名前のパン屋をやっていますので、よかったら来てください。

先程は有名な建築家が建てた建築の紹介でしたが、私はどちらかというと名もないというか、大工の棟梁さんが発表することもなく建てられた足元にある建築の見方とか歩き方とか、そういったものを伝えたいなと思っています。

私は田坂邸リノベーションと言っていますけど、うちの家は旧田坂家住宅といって、先日、国の登録有形文化財に指定された築101年目の建物です。


これはリノベ前の写真です。母屋があって、壁があって、門があって、母屋の下屋根のところになまこ壁があります。こういったものが島の建物のデフォルトになっています。外壁は焼杉です。中は昭和50年代ぐらいに改修されていまして、変なところに壁が作られたりとかプリント合板のベニヤが張られたりしていますが、なぜか昭和50年代位にモダン風にしようとがんばって、ダメになっちゃうケースが多いです。それをこのように天井を剥がしました。

壁を抜いて通れるようにもなりました。工事をしている立派な梁とか柱が出てきました。古民家で残念な改修をされちゃっているところは是非バールを持って壊してください(笑)。

うちはリノベで土壁を落としましたが、土壁を落とすと中から竹と縄で組んだ竹小舞というものがでてきます。これがなかなかかっこよくて、光を当てるとすごくかっこいい格子の影ができます。やむを得ず撤去しましたが、最終的にはこのようにリノベーションされました。


古い家なので、基本的には田の字プランといって、和室が4つ田の字に並んでいます。その脇を玄関からズドンと「通り庭」という土間があるような作りです。以前、残念な形に改修されて壁ができたものを壊して通れるようにして、元の形に戻したようなリノベーションを行いました。薪ストーブも導入しています。キッチンもカウンターを作ったり、上からの吊り棚を作ったり、結構モダンなのですが木と鉄を使ってできるだけ素材感を見せるようにしました。


古民家なので貫工法という木を組み合わせて金物を使わず柱に貫を差し込み、込み栓で固定しています。地震にも強いです。


写真のようなアールヌーボー調の装飾もあります。鑑定してくれた先生によるとフランス製のものらしいです。



百年の器

現在、先ほどお話しした壊した土壁を使って、陶器を作る試みを行っています。古いものから出てきたものをそのまま捨てるのではなく、さらに価値をつけられないかと試しています。さきほどの土壁を壊して出てきたのがこれです。

中には藁とか漆喰とか色々なのが入っているのですが、陶芸家の友人が精製し、焼ける陶土にして焼き上げてくれました。このように器を作って販売してみようとやっています。

先ほど白石さんから「場を開く」といった話がありました。この住宅もプライベートな空間ですが、この空間をリノベーションしたのも、外部の人に入ってもらうような半ばパブリックのような空間が作れないかと考えました。これから開いていければと思っています。せっかく築100年を超える古民家がかっこいい状態で残っているので、それを皆さんにどのように伝えるか。それが今後の課題になってくると思います。


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トークイベント『愛媛の建築について』宮畑周平(2)


Photography: 宮畑 周平 [Setouchi Editorial Institute]


トークイベント『愛媛の建築について』宮内健志(1)

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トークイベント『愛媛の建築について』宮畑周平(1)

トークイベント『愛媛の建築について』宮畑周平(2)

トークイベント『愛媛の建築について』座談会


トークゲスト PROFILE

宮畑 周平・みやはた しゅうへい

神戸市出身。瀬戸内海・弓削島で暮らす編集者、写真家、ライター、コーヒーロースター。最近はブランディングも。専門は建築。国の登録文化財に指定された古民家住まい。

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