石崎汽船旧本社ビル 木子七郎と松山(2)
愛媛・松山には、宮廷建築家として活躍した名門 木子家に生まれた在阪の建築家、木子七郎が設計を行った建築が多数残っています。今回はその中から、古くからの松山の海の玄関口である三津の港のそばに建てられた「石崎汽船旧本社ビル」を紹介します。
石崎汽船旧本社ビルは、萬翠荘より2年後の大正13年(1924)に完成しています。当初はエレベーターや、窓廻りには鉄枠が計画されていましたが、萬翠荘とは違って民間の建物ですから、予算の都合で取りやめになったと伝えられています。
建物は窓が五列並んでいますが、よく見ると真ん中の三列分だけが前面に張り出して、柱型を付け、柱頭飾りが施されています。黄色いタイルも貼られていて、真ん中を強調して作られたことが分かります。両側の白いタイルは萬翠荘の外壁と同じ、真ん中の黄色いタイルは、松山地方気象台(旧愛媛県立松山測候所)に使われているものと同じもだと考えられています。予算が厳しい中にも、ちょっとしたバルコニーが付けられていたり、玄関の上を洋風に飾ったりと、できる限りで様々な工夫を施したことが分かりますね。
石崎汽船は創業150年を超える老舗の海運会社。この建物は2013年まで使用されました。2階の社長室も天井が高く取られています。
- 『DOTS vol.2 特集:松山、木子七郎の建築を巡る。』(瀬戸内アーキテクチャーネットワーク、2014)より再構成
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